イ 復興整備計画
国土交通省や農林水産省が所管する法律に基づく事業を行うに際して受けられる、土地利用の特例が 内容となっています。
たとえば、これまで都市計画の土地利用に関しては、市-県-国という段階を経た手続きが必要でし たが、復興整備計画の場合では、市と県などが参加する協議会で協議し、国の関係機関の同意を経て公 表された場合には、計画に必要な許認可(この場合、都市計画法の開発行為、農地法の農地転用許可など) があったものとみなされることになり、復興のスピード化が図られることになります。
市は、平成24(2012)年6月、市長、国の関係機関の長、県知事などの構成による「いわき市復興整 備協議会」を設置しており、この機関における協議を経て復興事業計画を策定し、沿岸部の被災地を中 心として、防災集団移転促進事業、震災復興土地区画整理事業など、さまざまな土地利用に関する事業 に取り組んでいます。
ウ 復興交付金事業計画
復興交付金制度は、被災地方公共団体が自らの復興プランの下に進める地域づくりを、資金面から支 援することにより復興を加速させようと創設されたもので、いわき市を含む特定被災区域において、文 部科学省、農林水産省、国土交通省など5省40基幹事業およびこれら事業に関連する効果促進事業が 対象となっています。
市は着手可能な事業を事業計画として順次取りまとめ、平成23(2011)年度から平成27(2015)年 10月までに第1~13次にわたり申請し、これまで防災集団移転促進事業、震災復興土地区画整理事業、 災害公営住宅整備事業、復興整備実施計画事業などが採択されました。採択事業は延べ294事業、交 付対象事業費は約1,257億円、交付金額は約1,008億円に達しています。
当該交付金制度は、新たに「復興・創生期間」として、5年間の計画期間の延長がなされており、今 後においても、市の早期復興を図るため、事業の進捗状況を見極めながら、本制度を最大限に活用する こととしています。
市は「市復興事業計画」の重点施策として9項目を位置づけ、さまざまな事業に取り組んでいます。
(1) 津波被災地域の復興に向けた土地利用
① 震災復興土地区画整理事業
広範かつ甚大な被害を受けた既成市街地を速やかに復興するとともに、防災性に優れた市街地を形成 するため、背後の市街地および隣接
する農地、山林などを含めた区域に、 宅地や道路、公園、防災緑地などの 公共施設を一体的に整備します。 対象区域は、久之浜、薄磯、豊間、 小名浜港背後地、小浜、岩間の6か 所です。(表6-(1)-1)
復興へ向け、施策を展開(復興事業計画の重点施策)
6
■表6-(1)-1 震災復興土地区画整理事業の概要 整備内容
地区
被災面積 計画
浸水面積(ha) 全半壊(戸) 面積(ha) 区画(区画)
久 之 浜 20.2 270 28.3 213
薄 磯 27.0 326 37.0 185
豊 間 57.4 689 55.9 349
小名浜港背後地 76.7 568 12.2 17
小 浜 4.3 50 3.8 32
岩 間 11.6 188 12.5 59
② 防災集団移転促進事業
津波により相当数の建物が流出し、住民が住 むには適当でないと認められる区域内の住宅に ついては、防災集団移転促進事業により近隣の 安全な場所に住宅団地を整備し、集団移転を図っ ています。
対象区域は、久之浜町末続、久之浜町金ケ沢、 江名走出、錦町須賀の4か所です。(表6-(1)-2、 図6-(1)-1、2、11、16)
③ 津波被災地域における復興整備事業
ア 久之浜町末続
久之浜町末続地区においては、防災集団移転促 進事業により造成した宅地の引き渡しが完了し、 住宅の建築が進められています。
また、海岸堤防や末続川の堤防をかさ上げし、 防災・減災機能を向上させるほか、移転跡地の利 活用を図ります。(図6-(1)-1)
イ 久之浜町金ケ沢
久之浜町金ケ沢地区においては、防災集団移転 促進事業により造成した宅地の引き渡しが完了 し、住宅の建築が進められています。
また、海岸堤防をかさ上げし、防災・減災機能 を向上させるほか、移転跡地の利活用を図ります。
(図6-(1)-2、写真6-(1)-1)
ウ 久之浜町久之浜
久之浜町久之浜においては、旧国道より海側の地区で、震災 復興土地区画整理事業により地区幹線道路、地区内道路、公園 などの都市基盤施設を整備し、商業地や住宅地を適切に配置し て良好な市街地環境の形成を図るとともに、緩やかな階段状の
海岸堤防をかさ上げし、背後には津波防災緑地を設けます。(写真6-(1)-2)
また、久之浜・大久支所および久之浜公民館の機能を一体化・集約化した防災拠点施設(津波避難ビル) の整備を進めており、平成28(2016)年3月14日の供用開始となります。(写真6-(1)-3)
久之浜町久之浜字川田に建設していた災害公営住宅は、平成27(2015)年2月に完成しました。
■表6-(1)-2 防災集団移転促進事業の概要 整備内容
地区
移転促進区域 住宅団地
面積(ha) 世帯(戸) 面積(ha) 世帯(戸)
末 続 7.0 19 0.7 10
金 ケ 沢 3.5 13 0.6 10 江名字走出 0.6 22 0.1 15 錦 町 須 賀 4.0 39 0.7 21
■写真6-(1)-1 久之浜町金ケ沢地区の移転先団地
〔平成28(2016)年1月 いわき市撮影〕
■図6-(1)-1 末続地区土地利用構想図
■図6-(1)-2 金ケ沢地区土地利用構想図
■写真6-(1)-2 久之浜地区津波防災緑地 〔平成27(2015)年5月 いわき市撮影〕
エ 久之浜町田之網
久之浜町田之網地区においては、海岸防潮堤のかさ 上げ(歩道の整備)や浜川、横内川への水門整備などの 防災対策により、地域の安全性を向上させながら、現 位置における復興を基本とします。(図6-(1)-4)
オ 四倉町四倉
四倉地区においては、海岸防潮堤をかさ上げすると ともに、背後には津波防災緑地(県事業)を設けながら、 現位置で復興を図ります。(図6-(1)-5)
四倉市街地については、防災対策などにより安全性 の向上を図りながら、基本的に現位置における復興を 図ります。(図6-(1)-5)
四倉町上仁井田字矢ノ田には、災害公営住宅の整備 が完了しています。(図6-(1)-5)
カ 平沼ノ内
平沼ノ内においては、海岸防潮堤をかさ上げすると ともに、背後には津波防災緑地(県事業)を設け、市街 地の安全性向上を図ります。海岸に沿って海岸道路を整 備し、観光資源や生活利便性の向上を図ります。これ以 外の区域については、従前の土地利用を踏まえながら、 基本的に現位置における復興を図ります。(図6-(1)-6) 平沼ノ内字西原には災害公営住宅の整備が完了して います。(図6-(1)-6)
キ 平薄磯
平薄磯地区においては、海岸防潮堤をかさ上げし、 背後には津波防災緑地を設けるとともに、海岸道路を 整備し、観光振興の向上を図ります。
住宅地などについては、震災復興土地区画整理事業に より、高台や既成市街地を造成し、整備するほか、地区 幹線道路や地区内道路、公園などの都市基盤を整備し、 良好な市街地環境の形成を図ります。(写真6-(1)-4) さらには住宅地や業務地などをゾーニングにより、 生活利便性や安全性の向上を図ります。(図6-(1)-7、8)
■図6-(1)-3 久之浜地区土地利用構想図
■図6-(1)-4 田之網地区土地利用構想図
■図6-(1)-5 四倉地区土地利用構想図
■写真6-(1)-3 完成間近い地域防災交流センター久之浜・ 大久ふれあい館 〔平成28(2016)年1月 いわき市撮影〕
被災した豊間中学校は、従来の校舎から約300m内陸側
(豊間小学校西側)へ移転・整備します。(図6-(1)-7、8) 平薄磯字北ノ作には災害公営住宅の整備が完了していま す。(図6-(1)-7、8)
ク 平豊間
平豊間地区においては、海岸防潮堤や河川堤防をかさ上 げし、背後には津波防災緑地を設けるとともに、海岸道路 を整備し、観光復興の向上を図ります。
住宅地などについては、震災復興土地区画整理事業によ り、高台や既成市街地を造成するほか、地区幹線道路や地 区内道路、公園などの都市基盤を整備し、良好な市街地環 境の形成を図ります。(写真6-(1)-5)
さらには住宅地や商業・業務地などをゾーニングにより、 生活利便性や安全性の向上を図ります。平豊間字榎町には 災害公営住宅の整備が完了しています。(図6-(1)-9、10)
■図6-(1)-6 沼ノ内地区土地利用構想図
■図6-(1)-7 薄磯地区土地利用構想図
■図6-(1)-9 豊間地区土地利用構想図
■写真6-(1)-4 平薄磯地区の土地区画整理事業〔平成28
(2016)年1月 いわき市撮影〕
■写真6-(1)-5 平豊間地区の土地区画整理事業〔平成28(2016)年 1月 いわき市撮影〕
■図6-(1)-8 平薄磯地区の復興イメージ図
ケ 江名字走出、江名地区
江名字走出においては、海岸防潮堤を設けるととも に、防災集団移転推進事業による永崎字町田への移転 や跡地の利活用を図ります。(表6-(1)-2、図6-(1)-11) 江名港周辺については、防災対策により地域の安全 性向上を図りながら、基本的に現位置における復興を 基本とします。(図6-(1)-11)
コ 折戸、中之作地区
折戸、中之作地区については、海岸防潮堤のかさ上 げなどの防災対策などにより、地域の安全性向上を図 りながら、基本的に現位置における復興を図ります。(図 6-(1)-12)
サ 永崎、小名浜下神白地区
永崎地区においては、緩やかな階段状の海岸防潮堤を かさ上げするとともに、背後には津波防災緑地(県事業) を設け、市街地を中心とした地域の安全性の向上を図り ながら、現位置における復興を進めます。(図6-(1)-13) また、防災対策により市街地を中心とした地域の安 全性向上を図りながら、基本的に現位置における復興 を図ります。(図6-(1)-13)
永崎字町田には江名字走出の住民を対象とした集団 移転先に転用するとともに、災害公営住宅の整備が完 了しています。(図6-(1)-13)
小名浜下神白地区においては、海岸防潮堤のかさ上 げなどの防災対策などにより、地域の安全性向上を図 りながら、基本的に現位置における復興を図ります。
シ 小名浜港周辺地域
小名浜港周辺地域においては、土地区画整理事業で ある「小名浜港背後地震災復興土地区画整理事業」など を投入して港湾に配置されている主要施設、物流施設 などを再編し、さらに民間活力を活かしながら、新た な都市機能の集積を図ります。(表6-(5)-1、詳しくは26、 27ページ)
ス 小浜地区
小浜地区においては、海岸防潮堤をかさ上げすると ともに、海岸道路を整備(県事業)し、背後地の旧市街 地においては震災復興土地区画整理事業を施行し、防 災対策などによる地域の安全性向上を図りながら、良 好な市街地の再生をめざします。
県道泉-岩間-植田線の南側については、水産業や関 連事業所などの配置による地場産業の復活をめざしま す。(図6-(1)-14)
■図6-(1)-11 江名走出、江名港地区土地利用構想図
■図6-(1)-12 折戸、中之作地区土地利用構想図
■図6-(1)-13 永崎地区土地利用構想図
■図6-(1)-10 平豊間地区の復興イメージ
セ 岩間地区
岩間地区においては、海岸防潮堤をかさ上げするととも に、背後には津波防災緑地(県事業)を設け、海岸道路を整 備(県事業)します。後背地の旧市街については、2か所に 分散するカタチで震災復興土地区画整理事業を施行し、防 災対策などによる地域の安全性向上を図りながら、良好な 市街地の再生をめざします。
また、周辺の住環境に配慮しながら、利便性を踏まえた 位置に産業・業務機能の誘導を図ります。
(表6-(1)-1、図6-(1)-15、写真6-(1)-6)
ソ 錦町須賀地区
錦町須賀地区においては、一部住民が防災集団移転促進 事業により勿来第一土地区画整理事業区域内(錦町ウツギ サキ)への移転や跡地の利活用を図ります。
一部区域については、防災対策などにより市街地の安全 性を向上させながら、基本的に現位置で復興をめざします。
(表6-(1)-2、図6-(1)-16)
④復興グランドデザイン策定・推進による津波被災地区のまちづくり
津波被災地区の再生を図るためには、住民と行政とが役割を分担しつつ復興への努力を共に続けて いく必要があることから、市は、平成25(2013)年7月に沿岸域津波被災地復興プロジェクトチームを 立ち上げ、①久之浜・大久地区②沼ノ内・薄磯・豊間地区③
小浜・岩間地区の3地区において、住民との協働により地区 の復興と将来に向けた新しいまちづくりの目標・方策を明ら かにする「復興グランドデザイン」の策定に取り組んできま した。
この結果、①久之浜・大久地区においては平成26年7月に、
②沼ノ内・薄磯・豊間地区においては平成27(2015)年5月に、
③小浜・岩間地区においては同年7月にそれぞれ「復興グラ ンドデザイン」を策定しました。
今後は、引き続き沿岸域津波被災地復興プロジェクトチー ムを中心に、関係機関との情報共有や連絡調整に努めながら、
■図6-(1)-15 岩間地区土地利用構想図
■写真6-(1)-6 岩間地区の復旧・復興状況
■写真6-(1)-7 小浜・岩間地区復興グランド デザインを発表 〔平成27(2015)年8月4日 いわき市撮影〕
■図6-(1)-16 錦町須賀地区土地利用構想図
■図6-(1)-14 小浜地区土地利用構想図
津波被災地区の1日も早い復興と再生を図るため、地区と協働 で計画の具現化に向けた取組みを進めます。(写真6-(1)-7、8)
⑤ 海岸の防潮堤
東日本大震災の津波被害を受けた海岸を対象に、国・県が主 体となって延長約28kmの防潮堤を施工しています。
具体的には、防潮堤の高さを従来の高さから1~2.5mかさ上 げし、T.P(注)+7.2m(久之浜地区の一部はT.P+8.7m)にする とともに、従来のものよりも厚みを持たせるほか、法面の補強 や基礎を深くすることにより、引き波にも耐え得る「粘り強い」 構造としています。
工事は平成24(2012)年11月に着工し、平成29(2017)年3 月の完成をめざしています。(写真6-(1)-9)
(注)「T.P」とは、東京湾平均海面のことで、全国の標高の基準となる海水 面の高さです。
(2) 災害公営住宅の整備など
① 災害公営住宅の整備事業
災害公営住宅は、災害により住宅を失い、個人で住宅を 再建することが困難な被災者に対し、安定した生活を確保 してもらうために市町村が提供する公営住宅です。
市は、あらかじめ住宅需要や住宅建設地の適性などを検 討し、市民向けの災害公営住宅の建設計画を進め、平成24
(2012)年10月から一部建設に着手。平成27(2015)年度 末までの完成をめざしており、すでに平成25(2013)年10 月から同年12月まですべての団地を対象に一次募集を、平 成26(2014)年5月から同年6月まで二次募集を、同年8 月に三次募集を行い現在は毎月定期募集を行っています。
(表6-(2)-1)
建設を進めている災害公営住宅への入居は、平成25年度内の常磐関船団地を皮切りに平成26年度か ら27年度にかけて、それぞれ可能となる予定です。(写真6-(2)-1、2)
被災者の入居に際して、現行法の「被災市街地復興特別措置法」では、収入要件を緩和する対象期間 が災害発生日から3年間(平成26年3月10日)となっています。
これに対し、市は被災者が安心して暮らすことができる生活環境を整備するため、県および県内59 市町村との共同により、被災者が公営住宅などに入居しようとする場合の入居資格要件の緩和を平成 33(2021)年3月11日まで延長できるなどの「復興推進計画」を申請し、これが平成25年7月に認定 されました。
② 津波被災住宅の再建を支援
市は津波被災地域の住宅再建を支援することにより住民の定着を促し、本格復興につなげるため、「市 津波被災住宅再建事業補助金」を創設、平成25(2013)年8月から申請の受け付けをしています。 補助に当たっては、県市町村復興支援交付金を活用し、国が対象としている「全壊家屋」に加え、市 独自の施策として「大規模半壊家屋」「半壊でやむを得ず解体した住宅」まで対象を広げ助成しています。
■写真6-(1)-8 沼ノ内・薄磯・豊間地区 復興グランドデザインを発表 〔平成27
(2015)年5月18日 いわき市撮影〕
■写真6-(1)-9 豊間海岸の防潮堤 〔平成27(2015)年8月 いわき市撮影〕
■写真6-(2)-1、2 災害公営住宅「市営永崎団地」 および同団地における鍵の引き渡し式 〔平成 27(2015)年10月 いわき市撮影〕
また、平成27年3月より、「宅地購入事業」の追加および対象要件を拡充しました。
事業期間は平成25年度から平成32(2020)年度までで、住宅および宅地購入のためのローンの利子、 移転に伴う引っ越し費用、宅地かさ上げの工事費用の一部をそれぞれ補助します。(表6-(2)-2)
■表6-(2)-1 市内各地区における災害公営住宅の整備予定戸数(平成28年1月31日現在)
整備内容
地区団地名 所在 整備予定戸数・戸 戸数(戸)うち戸建 入居開始
(430戸)平地区
豊間 平豊間字榎町 192 (24)平成26年6月=集合6号棟平成26年10月=集合1~5号棟、戸建て 薄磯 平薄磯字北ノ作 103 (18)平成26年6月=集合1号棟平成26年10月=集合2号棟、戸建て
沼ノ内 平沼ノ内字西原 40 (0)平成26年4月
作町東 平字作町二丁目 45 (0)平成26年8月
北白土 平北白土字宮田 50 (0)平成27年11月
小名浜地区
(189戸) 永崎 永崎字町田 189 (24)平成27年10月=集合1~5号棟、戸建て
(237戸)勿来地区
佐糠第一 佐糠町東二丁目 30 (0)平成27年9月
佐糠第二 佐糠町二丁目 21 (0)平成27年9月
錦 錦町鵜ノ巣 64 (0)平成26年4月
関田 勿来町関田飯ノ辺前 72 (0)平成27年1月
四沢 勿来町四沢渋沼 50 (30)平成27年1月=集合平成27年12月=戸建て
(120戸)常磐地区
関船 常磐関船町古宿 32 (0)平成26年3月
下浅貝 常磐湯本町下浅貝 88 (13)平成27年11月=戸建て平成28年1月=集合1~3号棟
(250戸) 内郷砂子田 内郷高坂町砂子田内郷地区 250 (0)平成27年10月=第一工区修繕平成28年3月予定=第二工区修繕
(151戸) 四倉南四倉地区 四倉町上仁井田字矢ノ田 151 (21)平成26年7月=集合1、2号棟平成26年10月=集合3、4号棟、戸建て 久之浜地区
(136戸) 久之浜東 久之浜町久之浜字川田 136 (16)平成27年2月=集合1、2号棟平成27年10月=戸建て
合計 - 1,513 (146) -
■表6-(2)-2 市津波被災住宅再建事業補助金の内容
補助対象事業 補助対象経費 補助限度額
住 宅 建 設 等 再 建 事 業 住宅の建設、購入に係る金融機関からの借入金の利子に相当
する額 1戸当たり153万円
宅 地 購 入 事 業 住宅用地の購入に係る金融機関からの借入金の利子に相当
する額 1戸当たり147万円
住 宅 移 転 事 業 住宅の移転に伴う家財道具の運搬等に要した経費 1戸当たり10万円
津波被災宅地防災対策事業 宅地の盛土によるかさ上げ工事に要した経費の2分の1(津
波被災地内での再建のみ。自ら居住する家屋) 1戸当たり119万円 平成27(2015)年8月現在、4事業・延べ約400件の申請があり、合計約2.7億円の補助を実施しています。
(3) 心のケア
① 保健師などにより一時提供住宅、災害公営住宅等の被災家庭を訪問し、健康支援
東日本大震災により家屋が被災して、一時提供住宅(民間アパートや応急仮設住宅)に避難している 方々は、ともすると長引く避難生活でストレスや身体の不調を抱えがちになっていることから、健康状 態の悪化を防ぎ、心身ともに安定した生活が送れるように、市は保健師や看護師による被災者健康支援 事業を行っています。
具体的には、家庭訪問や集会所などにおける健康相談・健康教室を通じ、健康状態や生活環境の確認、 心身の健康に関する相談、助言、健康に関する情報提供などを行うもので、平成26(2014)年度は延 べ720件の家庭訪問、91件の健康相談・健康教室を実施してきました。
平成27(2015)年度においては、社会福祉協議会や地域包括支援センターにおける見守り支援と連 携しながら、災害公営住宅などへの訪問も開始し、健康支援活動を継続していきます。
② 子ども元気復活交付金を活用した子どもの運動機会の確保
市は、平成25(2013)年度から平成27(2015)年度まで、 国の福島定住等緊急支援交付金(子ども元気復活交付金)を 活用した「市定住緊急支援事業計画」として、遊具の更新や 地域の運動施設の整備に取り組んできました。
これは、原発事故の影響により人口が流出し、地域の復 興に支障が生じていることから、子どもの運動機会を確保 するための施設を整備することにより子育て世帯が安心し て定住できるよう環境を整え、地域復興の促進につなげよ うと実施するもので、保育所・幼稚園・小学校・公園など の遊具更新、子育て支援の拠点施設、屋内プールの改築な どの整備を盛り込んでいます。(表6-(3)-1、写真6-(3)-1)
■表6-(3)-1 定住緊急支援事業の概要
事業名 事業内容 事業個所 事業概要 事業期間
1 市立保育所遊具更新事業 24施設45基
ブランコ・滑り台・鉄棒などの遊具の更新 平成25~27年度 私立保育所遊具更新事業 23施設71基
2 市立幼稚園遊具更新事業 17施設34基 私立幼稚園遊具更新事業 35施設79基 3 市立小学校遊具更新事業 44施設121基 4 公 園 等 遊 具 更 新 事 業 14施設46基
5 海 竜 の 里 セ ン タ ー遊 具 更 新 事 業 1施設4基 アスレチック遊具の更新 平成26年度
6 ス ポ ー ツ 交 流 促 進 施 設(多 目 的 広 場)整 備 事 業 新舞子ハイツグラウンドの隣接地 ソフトボールが同時に4面で実施できる多
目的運動場及び駐車場の整備 平成25~27年度 7 屋 内 ヘ ル ス プ ー ル施 設 改 築 事 業 新舞子ハイツ 既存の屋内ヘルスプールを改築し、リニュ
ーアル 平成25~26年度
8 松 ケ 岡 公 園 整 備 事 業 松ケ岡公園 芝生広場や大型遊具などを配した遊具広
場、散策園路などの整備 平成25~27年度
9 な こ そ 子 ど も 元 気パ ー ク 整 備 事 業 旧植田児童館跡地・後宿公園 屋内外運動施設や公園内遊具の整備と併せ
て子育て支援拠点を整備 平成25~27年度
■写真6-(3)-1 植田町のいわき市こども元気セ ンター建設工事〔平成28(2016)年1月 いわき 市撮影〕
③ 体験型経済教育施設「Elem(エリム)」がオープン
市は、平成26(2014)年5月に、体験型経済教育施設「Elem(エリム)」を、市文化センター近くの平 字堂根町にオープンさせました。(写真6-(3)-2)
「Elem(エリム)」とは、アラビア語で「教育」を意味します。 同施設は、カタール国が東日本大震災の被災地復興プロジェク トに対して資金の援助を行う、「カタールフレンド基金」の支援を 受けて開設した教育施設です。
子どもたちは、公益社団法人ジュニア・アチーブメント日本と 市教育委員会が協働で実施する体験型経済教育プログラムの「ス チューデント・シティ(小学校5年生向け)」と「ファイナンス・パー ク(中学校2年生向け)」を通じて、社会や仕事の仕組みを体験す ることができます。(写真6-(3)-3)
両プログラムとも、学校の教育課程に位置付られた、正規の授 業として実施します。
なお、平成26年度の利用実績は、次のとおりです。(表6-(3)-2)
④ 子どもたちに安心して遊べる屋内施設を提供
市は原子力発電所事故の影響で外出を控え、屋外の遊びに不安を持つ保護者や子どもたちに安心して すごしてもらおうと、市内3か所に屋内遊び場を設置しており、大勢の子供たちに利用されています。
【設置場所】
○北部地区 海竜の里センター内「いわきっず るんるん」 ○中部地区 石炭・化石館内「いわきっず もりもり」 ○南部地区 南部アリーナ内「いわきっず ふるふる」
(4) 原子力災害対策
福島第一原子力発電所の事故に伴う放射線被害に対しては、市は実施主体である福島県の方針に基づ き、市民の放射性物質による内部被ばくの実態を把握するとともに、自己の健康に役立てていただくこ とを目的として、平成23(2011)年11月からこれまで、内部被ばく検査などを実施してきました。
① 放射線内部被ばく検査
ア 平成 26 年度までの検査結果
ホールボディカウンターによる内部被ばく検査については、福島第一原子力発電所の事故当時、いわ き市に住民登録があった方を対象として、順次、対象地区や対象年齢を拡大しながら実施してきました。 平成26(2014)年度末までに、9万7,139人が受検し、検出限界値(測定して検出できる最小値)を下 回った方は9万6,038人と、全体の98.9%でした。(表6-(4)-1)
また、検出された1,101人(1.1%)の方も、預託実効線量(内部被ばくによる累積線量/成人は50年後、 子供は70歳までを、それぞれ想定)は健康に影響がないとされている1ミリシーベルト未満でした。
■表6-(3)-2 体験型経済教育施設(エリム)の利用状況 (平成26年度) スチューデント・シティ
(小学校5年生向け) ファイナンス・パーク(中学校2年生向け) そ の 他 学校数 児童数 学校数 生徒数 利用回数 利用者数
69 3,137 41 3,128 11 564
■写真6-(3)-2 エリム外観 〔いわき市 撮影〕
■写真6-(3)-3 スチューデント・シティ で学ぶ児童たち(平第二小学校・中央台 南小学校)〔平成28(2016)年1月 いわ き市撮影〕
イ 平成 27 年度の検査状況
平成27(2015)年度についても、事故当時いわき市に住民登録のあった方、または、検査日時点に おいていわき市に住民登録のある方を対象に、引き続き検査を実施しており、12月末時点で、2,259 人の方が受検しました(全員預託実効線量1ミリシーベルト未満)。
ウ 今後の健康管理について
これまでの検査結果では、健康に影響を与えると考えられる値 は確認されていません。しかし、原発事故により放出された「放 射性セシウム137」が半減するまでには、30年の長い歳月を要し、 食事等を通して摂取される可能性は今後も存続することから、検 査を習慣化することが重要となります。
このため、検査は定期的に受けていただき、長期にわたる健康 管理に役立てていただきますようお願いします。
なお、検査を希望される方は、内部被ばく検査予約専用電話
(27-8562)にお申込みのうえ、検査を受けてください。
② 甲状腺の検査
ア 県民健康調査「甲状腺検査」
(ア) 先行検査(1 回目の検査)の一次検査結果
県民健康調査「甲状腺検査」の一次検査の結果は、平成27(2015)年6月末現在、対象者6万2,293
■表6-(4)-1 年度別受検者数の推移 受検内容
年度 受検者数
預託実効線量
1mSv未満 うち不検出
平成23年度 3,100 3,100(100%) 2,754(88.8%) 平成24年度 43,457 43,457(100%) 42,870(98.6%) 平成25年度 18,678 18,678(100%) 18,546(99.3%) 平成26年度 31,904 31,904(100%) 31,868(99.9%)
計 97,139 97,139(100%) 96,038(98.9%) 注) mSv=ミリシーベルト。
■表6-(4)-2 先行検査(1回目の検査)の一次検査結果(平成27年6月末現在) 受診内容
都市名 対象者 受診者数 受診率
結 果確定数
判定結果(上段人数/下段割合) A 1(注1)A 2(注2) B(注3) C(注4)
い わ き 市 62,293 49,429 79.3% 49,429 21,829 27,145 455 0 100% 44.2% 54.9% 0.9% 0%
福 島 県 367,685 300,476 81.7% 300,476 154,606 143,576 2,293 1 100% 51.5% 47.8% 0.8% 0%
福 島 県
外 3 市 4,365 4,365 100%
4,365 1,853 2,468 44 0 100% 42.5% 56.5% 1.0% 0% 注) A1判定 = 結節やのう胞を認めなかったもの。
A2判定 = 5.0mm以下の結節や20.0mm以下ののう胞を認めたもの。 B判定 = 5.1mm以上の結節や20.1mm以上ののう胞を認めたもの。 C判定 = 甲状腺の状態などから判断し、直ちに二次検査を要するもの。
■写真6-(4)-1 ホールボディカウンター による内部被ばく検査〔いわき市撮影〕
人のうち、受診者は4万9,429人で、受診率は79.3%となっています。
また、判定内容は、A1判定が2万1,829人(44.2%)、A2判定が2万7,145人(54.9%)、B判定が 455人(0.9%)となっており、C判定については、該当者はいませんでした。(表6-(4)-2)
(イ) 先行検査(1 回目の検査)の二次検査結果
二次検査の結果については、平成27(2015)年6月末現在、対象者455人のうち、受診者は422人で、 受診率は92.7%となっています。
また、受診者のうち、「悪性」ないし「悪性疑い」と診断された方は24人で、一次検査受診者に対す る割合は0.05%となっています。(表6-(4)-3)
(ウ) 本格検査(2 回目の検査)の実施について
平成27(2015)年5月以降、本市における2回目の甲状腺検査(本格検査)が実施されています。市内 の小・中・高等学校に通われている方は各学校で、それ以外の方(未就学児・大学生・社会人等)につ いては、市内の公共施設や協定を締結した県内および全国各地の検査実施機関で検査が実施されていま す。(表6-(4)-4)
(エ) 本格検査(2 回目の検査)の二次検査結果
二次検査の結果については、平成27(2015)年9月末現在、対象者113人のうち、受診者は14人で、 受診率は12.4%となっています。
また、受診者のうち、「悪性」ないし「悪性疑い」と診断された方は1人です。(表6-(4)-5)
■表6-(4)-3 先行検査(1回目の検査)の二次検査結果(平成27年6月末現在) 受診内容
県市名
二次検査対象者数 二次検査受診者 受診率
結果確定数
ないし悪性 次回検査 通常診療等 悪性疑い
A1 A2 細胞診受診者
い わ き 市 455 422 92.7%
412 23 130 259 92 24
97.6% 5.6% 31.6% 62.9% 35.5% 0.05%
福 島 県 2,294 2,108 91.9%
2,056 122 578 1,356 537 112
97.5% 5.9% 28.1% 66.0% 39.6% 0.04%
■表6-(4)-4 本格検査(2回目の検査)の一次検査結果(平成27年9月末現在) 受診内容
県市名 対象者 受診者数 受診率
確定数結果
判定結果(上段人数/下段割合)
A 1 A 2 B C
い わ き 市 64,285 22,395 34.8% 11,951 4,531 7,307 113 0 53.4% 37.9% 61.1% 0.9% 0%
福 島 県 379,952 199,772 52.6% 182,547 74,985 106,079 1,483 0 91.4% 41.1% 58.1% 0.8% 0%
イ 県民健康調査「基本調査」
原発事故から4か月間の外部被ばく線量を推計する県民健康調査「基本調査」については、平成27年
(2015)年9月末現在、調査対象者34万8,226人に対し、回答数は8万7,829件で、回答率は25.2%と なっています。
推計期間が4か月未満の方を除いた推計結果については、放射線業務従事経験者を除く7万2,768人の うち、99.1%にあたる7万2,105人の方が、実効線量1ミリシーベルト未満となっています。(表6-(4)-6)
③ 食品などの放射性物質の検査
ア 食品
市内の公立および私立の保育所や幼稚園、学校におけるそれぞれの給食、市内で製造された加工食品 や市内に流通する食品を対象とした放射性物質の検査については、平成24(2012)年から実施してき ました。
その結果、平成24年度分の結果については、いずれも検出限界値未満(不検出)、あるいは基準値以 下であり、いずれも健康に影響を与える数値ではないとされている1ミリシーベルトを大きく下回りま した。
平成25(2013)年度分の結果については、加工食品の1件を除き、いずれも検出限界値未満(不検出)、 または基準値以下でした。
加工食品で検出された基準値超過の1件については、販売前の段階で検査を実施したため、流通して いません。
平成26(2014)年度の結果については、いずれも検出限界値未満(不検出)、または基準値以下でした。 平成27(2015)年4月1日から12月末日までの結果については、いずれも検出限界値未満(不検出)、 または基準値以下でした。(表6-(4)-7)
イ 飲料用井戸水等
生活に欠くことのできない飲料水のうち、飲料用井戸水などについては、平成24(2012)年1月から 検査を実施しており、平成27(2015)年12月末現在で、1,898件すべてが検出限界値未満(不検出)で した。
■表6-(4)-6 県民健康調査「基本調査」の回答状況(平成27年9月末現在)
県市名 回答内容 対象者数 回答数 回答率 線量推計済数 推計率 結果通知済数 通知率
い わ き 市 348,226 87,829 25.2% 85,230 97.0% 85,120 96.9% 福 島 県 2,055,328 561,966 27.3% 544,714 96.9% 542,463 96.5%
■表6-(4)-5 本格検査(2回目の検査)の二次検査結果(平成27年9月末現在) 受診内容
県市名
二次検査対象者数 二次検査受診者 受診率
結果確定数
ないし悪性 次回検査 通常診療等 悪性疑い
A1 A2 細胞診受診者
い わ き 市 113 14 12.4% 3 0 1 2 2 1
21.4% 0% 33.3% 66.7% 100% 0.00%
福 島 県 1,483 1,023 69.0% 879 32 210 637 124 39 85.9% 3.6% 23.9% 72.5% 19.5% 0.02%